アパートがオマケで付いてくる?不動産価格査定の妙
売り出し価格が土地値だけのアパート
不動産には定価がありませんよね
そのため,時としてサービス価格の収益物件が市場に出てくることがあります
たとえば,こちらの物件
利回り15%って,収益物件のなかでは目立つ数字ではありませんが、、、
何がサービス価格なのかは,上記物件写真のリンク元である物件概要ページを見ていただくとして,今回は収益不動産の価格査定手法について,ちょっと解説してみたいと思います
https://mukunoki.biz/%e3%82%80%e3%81%a4%e5%b8%82%e4%b8%8d%e5%8b%95%e7%94%a3%e6%83%85%e5%a0%b1/%e5%8f%8e%e7%9b%8a%e7%89%a9%e4%bb%b6%ef%bc%88%e3%82%a2%e3%83%91%e3%83%bc%e3%83%88%ef%bc%89%ef%bc%8c%e4%b8%8d%e5%8b%95%e7%94%a3%e6%8a%95%e8%b3%87%e7%89%a9%e4%bb%b6%e6%83%85%e5%a0%b1/%e3%80%90%e4%bb%96%e7%a4%be%e3%81%a7%e6%88%90%e7%b4%84%e6%b8%88%e3%81%bf%e3%80%91%e9%9d%92%e6%a3%ae%e5%b8%82%ef%bc%8c%e9%ab%98%e5%8f%8e%e7%9b%8a%e7%89%a9%e4%bb%b6%ef%bc%88%e3%82%a2%e3%83%91%e3%83%bc/
中古アパートの価格を査定(売り出し価格の決定)するときよく用いられるのが積算法というものです
積算法とは
土地の価格と(相続税路線価や固定資産税評価額をベースにして,一般的な取引価格の近似値となりうる公示価格相当額を計算します),建物の価格(新築時の調達原価を計算し,経過年数による劣化・損耗分を減価して現存価値を計算=再調達原価の現価率)をそれぞれ計算します
ただ,積算方法の価格指標となる相続税路線価や固定資産税評価額は,道路ごとに一律の土地単価を付与しただけのものですので,人気学区や,近隣商業施設の有無による不動産の付加価値が生じていると判断される場合,市場流通性補正率を適正に設定することで実需に見合った査定価格を導き出せると考えています
当社が不動産の価格査定作業を行う際に,基本的に採用する方式は市場流通補正率を加味した積算法になります
ちなみに,収益物件(投資物件)であるアパートの購入資金を金融機関に融資申込みを行った場合,銀行が担保価値(資産価値)を計算する方法は圧倒的に積算方法だと言われています
もちろん,後述する収益還元法によって物件の収益性に着目して(資産価値は低いが,入居率が高く家賃収益が高い物件)融資の可否を判断してくれる金融機関もありますが,少数派です
金融機関は,積算法で出た金額にさらに掛け目(金融機関ごとに独自に設定した補正値で,路線価に0.6とか0.7とか減額補正をして担保価値を低めに評価します)を施して担保評価額を決定しています
よって,これから賃貸業ビジネスとして収益物件(アパート)を取得していこうと思っている方は,まず積算法の仕組みを理解していただくことが融資付け対策ともなるため重要だと思います
もちろん不動産の価格査定手法には,これ以外にも取引事例比較法や,収益還元法などがあります
収益還元法とは
収益還元法は,語弊を恐れないで一言で言えば,物件(アパート,貸家,区分マンション等の賃貸物件)の得るであろう年間想定賃料収入を利回りパーセントで割り戻した金額を査定金額とすることです
例えば,1Kの間取りで月額賃料25,000円の部屋が10戸あるアパート(築25年)で計算してみます
満室の場合,年間想定家賃収入は
25,000円×10戸×12ケ月=3,000,000円
年間300万円の収入を生む不動産ということですが,最初に紹介した積算法で査定した場合,築年数が相当経過している建物となりますから再建築原価の現価率は新築建物の1~2割程度でした評価されません
新築時3千万円程度の評価だった建物であれば,300~600万円程度の査定価格となります
10戸ある部屋が現在満室で経営されており,1年間で300万円の家賃収入を生むアパートであっても,積算法で査定した場合,事業収益性は加味して評価することができないわけです
次に収益還元法で同じ物件を査定してみます
収益還元法の査定計算式は,年間想定収益÷利回りです
300万円を利回りで割り戻しするわけですが,利回りは何パーセントで設定するのでしょうか?
実は収益還元法の利回り設定は,明確な基準や計算式があるわけではありません
建物が今後,何年間にわたって収益を上げていくことが可能か,その間の建物の老朽化による修繕・リフォーム費用の発生をリスクとして捉え,リスクが低いと予想されれば利回り数値を低く,高いと予想されれば利回りを高く設定します
今回の設例したアパートで考えた場合,築年数25年で今まで一切の大規模修繕(外壁塗装,屋上防水など)がなかった場合,今後それらの多額費用を工面しなければならない場面が出てくるわけです
他の競合アパートとの入居競争に勝つために,陳腐化した居住設備を入れ替える(例えばチャイムをモニター付きインターホンに交換,便器をウォッシュレットに交換,給湯関係を混合栓に交換など)必要も出てくるでしょう
これら,将来発生する可能性が高い費用負担分(リスク)を利回りに何パーセント上乗せするかという判断になるわけです
これらを考慮すれば,築28年程度を経過した物件ですと20~22%の利回り設定が適当かと思われます
利回り20%で収益還元法で査定してみると
3,000,000円÷0.2=15,000,000円
同じく22%
3,000,000円÷0.22=13,630,000円
ちなみに,収益物件のポータルサイト(不動産投資連合隊,楽待,健美家,ホームズ不動産投資,アットホーム)などでは,利回り20%を超えると目玉物件として取り扱いがされる可能性が高く,高利回り物件として成約率が高くなります
お手持ちのアパートが築古でも早期に処分したいという時などは,満室時想定利回りが20%超になる価格を売り出し価格として設定してみることは有効な方法です(現況利回りも20%超で確保されているのが理想的です)
取引事例比較法とは
取引事例比較法は,査定を行なおうとする同種・同等の不動産取引事例価格から事情補正(※1),時点修正(※2)を行い不動産の価格査定を行います
※1 取引事例と査定不動産との条件をプラス,マイナスでポイント補正することで評価額調整を行うこと
※2 取引事例の取引年月日から経過年数を考慮して,その間の土地の価格変動分を補正すること
ただし,この取引事例比較法には大きな弱点があり,多数の事例収集と,事例選択の適否が査定価格の精度を大きく左右することです
ちなみに,不動産業者間の情報流通ネットワークである,指定流通機構(通称レインズ)では登録物件の成約登録事例をデータベース化して蓄積しているわけで,取引事例比較法で取引事例として活用できるはずなのですが、、、
むつ下北地域ではデータベースの蓄積がほとんど皆無(成約登録まで完遂していない業者が大多数)の状況のため,残念ながら取引比較事例法を採用しての不動産価格査定の手法は不可能です
過去の膨大な取引事例データがある不動産業者であれば,自前の過去データと比較して取引比較事例法を用いることも可能でしょうが,その場合,比較採用データ自体に偏りが生じやすいため,査定価格の精度,信頼度に安定性を欠くことは事実です
取引事例比較法は,積算法や収益還元法により査定を補完する位置づけで採用することが適当だと思われます
以上,収益不動産の価格査定方法としてメジャーな3つの方法を解説してみました
これらを踏まえて,最初に紹介した青森市のアパートの投資商品の価値を改めて分析してみます
収益還元法で見てみた場合,築年数が経過している割りには利回り15%程度と数字が平凡に見えるかもしれません
ただし,積算法で見た場合,固定資産税評価額で12,000,000円オーバーですから,そのから導き出される一般市場取引価格は土地だけで18,000,000円程度となります
つまり,売り出し価格は土地値でしかないため,建物(アパート)はオマケで付いてくるという考え方もできるわけです
収益物件については,多方面からその価値を探ってみると意外な掘り出し物に出会える可能性が高くなりますよ,というお話でした