「30年一括借り上げ(サブリース)」の落とし穴
CMでお馴染み「30年一括借り上げ(サブリース)」
その謳い文句
「賃貸経営のリスクを解消」って,これ誰のためのリスクを解消しているの
まず「30年一括借り上げ(サブリース)」で強調されているオーナー側の一般的メリットとしては,以下の点となります
①更地・遊休地にアパートを建設することで,土地の評価額を6分の1,又は3分の1に軽減することで固定資産税・都市計画税の節税ができる
②現在の手持ち資産(現金・預金等)を土地・建物という不動産に換価することで,相続税路線価と市場資産価値の差額分(土地はおよそ3割~5割,建物は2~3割程度の相続税課税価格の圧縮が可能)節税対策ができる
③アパート経営で煩わしい部分となる入居者募集や物件保守管理,家賃入金管理までを30年間一括で借り上げ面倒を見てくれる
でもでも、、、、 ( ..)φメモメモ
①固定資産税・都市計画税の節税のメリットに対する当社の考え
税制の面から節税になることは確かですが,問題はその対策を打つことによって得られる効果(節税額)が妥当かどうか,きちんと判断することが重要です
更地,遊休地に住宅(アパート・マンション含む)を建てると,小規模住宅用地の軽減措置(住宅一戸につき200㎡まで固定資産税評価額が6分の1),一般住宅用地の軽減措置(住宅一戸につき200㎡を超え,家屋床面積の10倍まで固定資産税評価額が3分の1)が適用されます
所有されている更地・遊休地の面積と評価額(相続税路線価),それに伴って発生している固定資産税・都市計画税の納税額をベースとして,どの程度の規模(戸数)でアパートを建設することで,最大限の節税にもっていくかの話です
つまり,地価のバカ高い東京あたりでの節税有効策は,地価のバカ低いむつ市に置き換えた場合、課税価格の軽減にあずかる目的のみで数千万円の負債を起こすことは非効率でありナンセンスだと思います
節税の観点で賃貸事業に舵を切りたいとお考えなら,相談すべきは家賃保証会社(建設会社)ではなく,不動産事業の節税手法に長けた税理士に相談すべきでしょう
②相続税課税価格圧縮のメリットに対する当社の考え
固定資産税・都市計画税節税のメリットに対する反論と同じです
そもそも,節税対策と銘打つ場合は,個々の資産状況に照らした上で,不動産(アパート)に換価することが一番の有効策であることを綿密に分析し判断する必要があります
家賃保証会社の作成した収支シュミレーションがある場合,アパート取得のためのイニシャルコスト(不動産取得税,登録免許税,司法書士・土地家屋調査士への登記申請書作成報酬料,ローン保証料など),ランニングコスト(固定資産税・都市計画税,共用部分の光熱費,定期メンテナンスの種類と費用,建設費返済に占める利息部分の推移=経費計上可能額の推移,将来にわたっての保証家賃の下落率など)などが全て網羅されたものになっているかしっかりチェックしてください
これらが欠如している収支シュミレーションが作成されているのであれば,それは,あなたの賃貸事業成功のための収支シュミレーションではなく,家賃保証会社の営業促進ツールでしかありません
「マイナス財産(建設資金の借り入れ負債)を発生させ,プラスの相続対象財産と相殺させることで,相続税課税価格を圧縮できますので相続税を節税できますよ」と家賃保証会社に説明されれば納得しそうになりますが、、、、、負債は相続時に課税計算する際だけに単なる数字として存在するものではなく,将来的に返済する義務が続く事業負債であることは忘れてはいけないと思います
アパート経営が,賃貸事業として成り立つか否か見極めるのは,建設業者ではなく,あなた自身でなければなりません
③ 30年一括借り上げ(サブリース)の瑕疵※に対する当社の考え
※表面的には見えない,気づかない欠陥のこと(契約書をよく読み,理解できれば瑕疵でも何でもないのですが、、、)
アパート経営では,新築マジックという言葉があります
人は一般的に同じ条件面であれば,新しいものを好んで選択する場合が多いという傾向があり,そのため,どんなアパートであれ新築時は入居者が一番付きやすい状態です
この時期の入居者付けには大家さんが自主管理であれ,さほど苦労はしないでしょう
しかししかし「30年一括借り上げシステム(サブリース)」には新築時の免責期間条項という,大家側としては理解に苦しむ無収入期間を強制されます
これは,「新築時は,すぐに入居者確保(家賃保証の支払い原資の確保)できないリスクがあるので,新築から30~180日(1ケ月~6ヶ月)は家賃保証の責任を全額免除(家賃は一銭も保証しません)させてもらいます」ということです、、、、、、
物件の定期メンテナンスは,一括借り上げの建設業者さんに計画されますが,費用は当然大家さん持ちです
この保守計画の中には,他物件の競争力を維持するために必須な作業もあれば,直接的には結び付かない作業まで色々と組み込まれて否応なしに実行されていきます、、、、
極め付けは,解約条項の存在です (ToT)/~~~
以下,解約条項例をいくつか
第◯◯条
甲又は乙は3ヶ月の予告期間をもって本契約の解約を相手方へ通知できるものとし,この場合は予告期間の満了と同時に本契約は終了する
第◯◯条
乙は,第 条第 項の規定に従って,経済状況の変化,近隣における賃料相場の変動等を考慮して保証家賃額の改定を行ったにもかかわらず,甲が保証家賃額の改定を承諾しない場合,乙は直ちに本契約を解除することができる
第◯◯条
甲が本契約に違反し乙が催告したにもかかわらず甲が是正しないとき,又は本契約に定められた甲と乙との協議が成立しないことにより,本契約を継続することが著しく困難な状態になったときは,乙は催告のうえ,本件契約を解除することができるものとします
これら解約条項はすべて,家賃保証会社が賃料の改定(値下のこと)を,大家さんに提案し,大家さんが納得しない(納得できない)拒否する場合,一定期間の催告(家賃値下に同意しろ)の後,解約されてしまうことを意味しています
本来,大家が望む家賃保証制度とは,アパートが老朽化し空き室が目立ってきた際に,ある程度の家賃収入を確保できればと期待するシステムでしょう
残念ながら家賃保証の実態は,満室が望める時期には実質収入を減らし,定期的な保守メンテナンスによって手持ちの資金が枯渇,想定していない(説明されていない)家賃値下に難色を示せば最悪は契約解除、、、、、、
あれ?30年の保証期間って何だったのでしょうか? (T_T)
アパート経営は楽なものではないです
だからといって,すべてを丸投げして稼げるのがサブリース契約だと考えるのは非常に危険だと当社は考えます