不動産トラブル(少額訴訟の利用のしかた)

 

Q

アパートの賃借人(住人)が家賃を3ヶ月滞納しています。

金額もそれほど多くないので,本格的な裁判まではしたくないのですが,取り立てするのに何か良い方法なないでしょうか。

困っている大家さん

A

比較的簡易で迅速な訴訟手続きで,少額訴訟を活用されることをおススメします。

少額訴訟によることを明記した訴状を,簡易裁判所に提出することで手続きが開始されます。

 

 

『解説』

 

一般に訴訟(裁判)は,解決までに時間と経費がかかることが大きな悩みです。

特に請求金額が比較的少額なものである場合には,相対的に費用が高くついてしまうことが避けられません。

その結果,費用対効果を考えて,当時者が訴訟提起に二の足を踏んでしまうというのも,しばしば見られるのが現実です。

 

そこで,このような比較的少額の訴訟を通常の訴訟手続きに比べ、,より簡易,迅速な手続きで進める制度が平成10年1月1日からスタートしています。

これが,【少額訴訟】といわれる訴訟手続きです。

裁判所

少額訴訟を利用するためには,次の2つの法律上の要件を,いづれも充たす必要があります(民事訴訟法第368条)

 

①60万円以下の金銭の請求であること

②同一の者が,同一の簡易裁判所においてこの手続きを利用することが年10回以内であること

 

このように,アパートの家賃滞納に困っている大家さんにはピッタリな要件ですので,気軽に活用できる制度となっています。

ひらめいた大家さん

少額訴訟では,特別の事情がある場合を除き,1回の口頭弁論で審理を終え(一期日審理の原則),審理終了後ただちに判決の言渡しをすることを原則としています(民事訴訟法第370条)。

民事裁判

そのため,即時に取り調べることができる証拠に限って証拠調べができます(民事訴訟法第371条)。

 

なお裁判所は,原告(大家さん)の請求の全部または一部を認容する判決をする場合において,被告(アパートの住人)の資力その他の事情を考慮して必要があると認めるときは,判決の言渡日から3年を超えない範囲で支払の猶予をすることも認められています(民事訴訟法第375条)。

 

支払の猶予方法としては

 

①支払期限を定めること。

例えば,半年後まで支払うことにするなどです。

②分割払いの定めをする。

例えば,毎月〇〇円の5回払いなどです。

③支払期限にしたがい支払をしたときに,(少額)訴訟提起後の遅延損害金の支払義務を免除する旨の定めをする。

要は,約束通りの時期に支払ってもらえれば,損害金はオマケするということです。

④期限の利益を失うことなく分割払を完了したときに, (少額)訴訟提起後の遅延損害金の支払義務を免除する旨の定めをする。

要は,約束(支払日,分割金額)どおり支払いを完了したら,損害金はオマケするということです。

 

また,(少額)訴訟提起後に,被告(賃借人=アパートの住民)が延滞賃料全額を支払ってきたような場合には,裁判所から相当強く和解を勧められることになります。

この場合には,例えば賃料の支払いを2ヶ月分怠ったときには強制執行することができる旨の条項を入れた和解調書が作られるのが一般的です。

このような和解調書の作成を目的として(少額)訴訟提起をすることも,実務ではしばしば見られるところです。

 和解

以上,手続きがカンタンでスピーディー,しかも,相手方にも一定程度の配慮をすることで,不動産のトラブルを解決できる少額訴訟の解説でした。